今回は、防災トランプのはじめて教室であったエピソード。『歯磨きをしていない』というお題で歯科医の方が話してくれていると、小学生の女の子がプレイリーダーである岡に、私も話したいと声をかけてくれました。小さい声で話してくれたのは「虫歯で歯がないといじめられちゃう」ということ。その場にいた大人ははっとしたお話です。
11月8日は防災トランプのはじめて教室がキュリオステーション淵野辺店にて開催されました。大人7人、子ども7人の計14名が参加し、防災トランプをつかって様々なお話ができました。その中で、『歯磨きをしていない』というお題について、参加してくれた歯科医であるKさんがお話をしてくれました。
大人の目線で、
・歯磨きをしていないと虫歯ができやすい
・歯周病になり歯が抜けやすくなる
・災害時など歯磨きができない環境では…
とお話をしている最中、私の横に座っていた小学1年生のEちゃんが、こっそり耳うちしてきました。
「このお話で、私も話していい?」
もちろんいいよと伝え、次のターンに行く前に「Eちゃんからもお話があるそうです。」と岡からEちゃんに話をふると、とても恥ずかしがりながら一生懸命にお話してくれました。
「えっとー…あのねぇ、…
いじめられちゃう。
学校で歯がないといじめられちゃう。」
その時の大人の衝撃といったら…(°_°)
一様に「たしかに。」と口にしていました。
子どもの世界では、虫歯や歯がないことでからかわれることもあるでしょう。
私から「傷つくね。」と返したら、
「うん。」と言っていました。
Eちゃんは虫歯がないようですが、いじめられるこでも見たのでしょうか。
虫歯について知っているようでわかっていない方もおおいのではないでしょうか。「甘いものを食べると虫歯になりやすい」ことは小さい頃から耳にしていたことですが一体どうやってむしばになるのでしょう?私もわからなかったのでちょこっと調べてみました。
厚生労働省が運営している生活習慣病予防のための健康情報サイトにわかりやすく、詳しい説明が記載されています。
むし歯の特徴・原因・進行
歯の表面のプラーク(歯垢)の中には細菌が存在します。細菌は飲食物の中の糖分を摂取・分解して酸を出します。この酸により歯は溶かされます(脱灰)。人の唾液は、酸を緩衝して中性に近づけることで歯を守ります。また唾液は、カルシウムやリン酸を含んでおり、これらが脱灰された歯を修復(再石灰化)します。糖分の摂取が頻繁で、酸の緩衝や再石灰化が間に合わずに脱灰された状態が続くと、その部分はそのうち崩壊することとなります。これがむし歯です。むし歯により崩壊した歯質は、再石灰化等により自然に回復することはありません。むし歯の穴を埋めて修復する歯科治療が必要になります。また進行したむし歯では、歯の神経にまで細菌が達します。こうなると歯の神経を抜く大掛かり治療が必要になります。さらに進行した場合には、歯の根元にまで細菌が達して病巣ができて、その結果歯肉から膿が出ることもあります。この場合歯を抜かなくてはならないこともあります。
引用元:厚生労働省「e-ヘルスネット」情報提供
ということは、歯が欠けた状態、歯が抜けた状態というのは虫歯がかなり進行しており、神経も細菌の酸にやられていたらとても痛い時期があったのでしょうね。
Eちゃんのお話からもこれまで学校生活を体験してきた大人でも、虫歯などで歯がなかったりすると学校でいじめられるリスクが高いというのは、りかいできますよね。さらに歯がない状態まで虫歯が進行しているとかなり痛いと思います。
Eちゃんがいじめられると話してくれたあと、歯科医のKさんからもさらに虫歯と虐待の関係性について話してくれました。
「最近では、虫歯を放置してたりするとネグレクトで虐待にあっている可能性もあるとして、歯科医もなにかあったら通告しなさいって言われているんですよ」と。
お子さんに虫歯があり、虫歯の状態がかなり進行してから学校の歯科医による訪問診療などでわかることも多いようですが、近年では虫歯があるにもかかわらず歯を治療していないお子さんはネグレクト状態にある可能性が高いとの報告もされています。それだけでなく、顔のあざや口腔内出血などもわかるため、歯科医の方々が児童虐待の早期発見者になりうると注視されています。
全国各地の歯科医師会では、虐待対応についてマニュアルを作成し、周知に努めているところもあるようです。
実際に奈良県の歯科医師会では、独自に児童虐待として通告、一時保護された子ども108人を対象に歯の状態を調べたところ以下のような結果がわかりました。
被虐待児童で DF(df)歯数が高く、5~9歳では歯科疾患実態調査で 0.4 本であるのに対し、虐待で 6.2 本、さらにネグレクトでは 7.4 本と高い結果であった。被虐待児童では未処置のう蝕所有率は高く、特にネグレクトでは 5 ~ 9 歳で 71.4%、10~14歳で 85.7%と歯科疾患実態調査と比較して 3 倍以上であった。各年代において、歯科疾患実態調査では1本未満であるのに対し、ネグレクトでは5本以上と明らかに未処置歯が多かった。
引用元:奈良県歯科医師会「児童虐待予防マニュアル」PDF
もし仮に、家では歯の痛みに耐え、心配してくれる人が不在の状態で、さらに学校でもからかわれていたら…子どもにとってはとてもつらい日々ですよね。
近年、予防歯科の普及と歯の大切さの認識により、子どもたちのむし歯の数および未処置のむし歯は大きく減少しています。また、虫歯予防には、規則正しい生活習慣と食生活が大切であることがわかっています。その上に子どもにおいては、保護者による仕上げ磨きおよび、かかりつけ歯科医による定期健診が重要であることがわかっています。普通の生活環境において5本以上放置されたむし歯があることは、まれなことです。引用元:奈良県歯科医師会「児童虐待予防マニュアル」PDF
という医師の立場からのコメントもありますが、かならずしも虐待とは言えない場合もあるとおもいますし、お子さんの体質や性格によっても違いはあると思います。
また、このマニュアルの中の「児童虐待に対する医師のつとめ」としてこんなことが書かれていました。
特にネグレクトの場合、子どもの食生活や生活リズム、口腔衛生状態に悪影響を及ぼす可能性が高くなります。偏った食事、特にカップ麺やインスタント食品、清涼飲料水が多く、起床や就寝時間が不規則な生活を送る場合が多いと思われます。周知の通り、食生活が偏り、生活リズムが不規則な子どもはう蝕にかかりやすくなります。だからといってう蝕の多い子が必ず虐待を受けているとは言えませんが、う蝕の発生する原因を探っていくうえで、その子の家庭環境や生活習慣などをよく考えていく必要があります。
引用元:奈良県歯科医師会「児童虐待予防マニュアル」PDF
まずは、虐待についてどうこうというよりも、医師会のマニュアルに示されているように、子どもの生活環境をよく見てあげることがだいじだとおもいました。親でなくても地域の大人や学校の先生、または同級生の子どもでも察知できることがたくさんありそうですね。
身の回りの危険を回避するという意味でも、周りの変化に気が付き、歯がない子をからかうのでなく心配できる関係が築ける子どもが増えていってくれたらいいな。そんなふうに思うきっかけをもらった防災トランプのお話でした。
岡歩美
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