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コツコツ防災|防災訓練を日々の生活から考える

有泉 亨さん(解体業)が語る防災

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有泉 亨(ありいずみ とおる)。1967年生まれ。
株式会社 有泉産業 代表取締役。
横浜市の港北区で解体業の事業を営まれている有泉さん。僕たちが普段住んでいる「家」や、利用する「建物」にお仕事で関わられており、専門家の立場とご自身の経験から防災について語って頂きました。「ブロック塀に関する危険」は「最近気になる身のまわりの危険について」以降でご紹介しています。

職業と自己紹介

「自己紹介を兼ねてご職業について教えてもらってもよいでしょうか?」
「建物の解体工事、外構工事、造成工事、土止め、擁壁、給排水など建物全般に関わる仕事をしています。みなさんに馴染みのある言葉だと、リフォームや新築なんかもそうですね。」
「建築・建設もやられるんですね。すごい。」
「解体業に就く前は、もともとハウスメーカーにいて、木造や注文住宅をやっていたので、『家をつくる』という発想が根底にある解体屋をやっています。」


起業のきっかけ

「起業したきっかけって何かありましたか?」
「直前まで勤めていた会社も解体業だったのですが、やり方の違いですね。」
「やり方というと具体的にどんな?」
「もともとハウスメーカーとして『つくる立場』だったので、解体後の現場が汚いということに違和感を感じていました。大きい石ころがそのままだったり、ガラが転がっていたり、切り口がもっときれいにならないのかな?とか。上手い/下手っていうより職人によっても判断基準がバラバラなので、解体の過程だったり、更地の状態だったり、近所の挨拶まわりだったり、そのあたりについて『次の工事が入ることを考えて作業する』という点を大事にしたいと思って起業しました。」
「ただ、壊せばいいってわけじゃないんですね。素晴らしいです。」

仕事をしていて危険だなと思った体験談

「現場に行けばよくわかるんですが、埃は出るし、音は出るし、振動は凄いし。それを回避しようとすると工事手順に工夫がいります。工期を短くすれば、職人の人工(対応時間)も近隣へのダメージも減るので、会社的にも利益があがり理想的ですが、ドカンと一気にやると事故を起こすリスクが高まります。」
「なかなか難しそうですね。具体的にどんな事故があるのでしょうか?」
「例えば、2階についているバルコニー。アルミで後付けしてあるようなものは、切り離して落とすから大きな問題はないのですが、建物や外壁と同化しているタイプは部材が大きいので、早く終わらせようと一気にやると重機の耐荷重上限よりも重たく、壊した途端にその重みでズドンと一緒に落ちてしまうんですね。それでお隣さんの外構や外壁を壊しちゃったりという経験はありますね。」
「なるほど。そういえばニュースで以下のような記事を見たのですが、これもやはり工期を焦ってしまったのでしょうか。」

壁倒れ、17歳少女死亡=工場解体中、道路に30メートル-岐阜

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14日午後3時35分ごろ、岐阜市北一色のアルミ工場「かんぜん」の解体現場で、「壁が崩れ、下敷きになった人がいる」と119番があった。消防が駆け付け、壁の下から高校生とみられる少女(17)を救出し病院に搬送したが、午後5時すぎに死亡が確認された。県警岐阜中署が状況を調べている。
中署や消防によると、壁は道路側に長さ約30メートルにわたって倒れていた。鉄骨の骨組みにスレート板やコンクリートが張られており、高さは約5~6メートル。工場の建物の一部だった。少女は工場そばの道路を歩いていたとみられる。(2010/10/14-18:23)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010101400616

「複合的な要因だとは思うのですが、例えば壊すものに足場をつけて、一部壊して足場の重みでもってかれて倒れるなんてこともあります。工事の手順や段取りがとても重要になりますね。取り扱う機械も大きいものになると、壊す対象も大きくなり、鉄骨なんかもバチンとは切れずガジガジひねりを加えながら切るんですね。あちこち力がかかったり。この事件そのものの原因はわかりませんが、力のかかり方1つでも工事の手順をしっかりと考える必要があります。」
「手順や段取りをきちんと確認しておくことが大きな事故を防げるというわけですね。解体業の方限った話ではないと思うので改めて自分事として捉えたいと思います。」
「そうですね。私も気を付けたいと思います。」
「話し変わってしまうかもしれないのですが、『家の重さ』ってどのくらいの重さ何でしょうか?」
「そうですね。40坪くらいの家で…木材だけで4tトラック8台分くらいですね。届出なんかだと50tくらいで試算することがおおいので30t弱~50tくらいの間になるんじゃないかなと思います。」
「計算の仕方も参考になりました。それだけ重たいと崩れたとこにいたら命があぶないですね。よくよく考えたら地震そのもので人が死ぬことは(少)ない。地震によって崩れた家や建物によって怪我したり死につながったり」
「そうなりますね。家なんかとくに解体するときにあっさり壊せるものと中々壊せないものがあります。
「どんなものがあるんですか?」
「例えば、木造の家でも工法によって構造が異なるのですが、解体時に苦戦することがあります。2×4(ツーバイフォー)とか、壊すときに厄介です。日本の伝統的な軸組工法は接合部にダメージ与えれば全体がわりとパキパキ崩せるんですけど。」
「軸組の工法と2×4の工法を比較した場合どんな違いがあるんですか?」
「軸組と2×4は、わりばしでつくったフレームと空のティッシュ箱にそれぞれ例えられるんですけど、例えば角から荷重をかけたとします。そうすると、わりばしでつくったフレームはペシャンと倒れてしまうのですが、ティッシュ箱の方は倒れたり崩れたりしません。簡単に言うとこんな違いがあります。」
「なるほど、面で支えている分、耐震性が優れているということですね。デメリットは頑丈なだけにリフォームしにくいとか・・・?」
「その通りです。あとは手抜き工事とかも結構ありますね。
「ええー。手抜き工事ってそんなにあるんですか。」
「ビスの取り付け基準というのが一面あたりに何本って決まっているんですが、守られなくて少なかったり。当然、ビスの数が少なければ強度は落ちますよね。」
「なるほど。他にも工法ってあるんでしょうか?」
「軸組+パネル工法みたいなものもあるんですが、平成6~7年から施工が始まったのでまだ壊す時期にきていません。このあたりはかなり苦戦しそうだなって思っていたりします。」

東日本大震災の時なにをしていたか

「次に、東日本大震災が発災した際(東北地方太平洋沖地震が起こったとき)になにをされていたか教えてもらっても良いですか?」
「はい。横浜市中山の不動産屋で打ち合せをしてました。すごいゆれましたね。駅前だったんで、最初なにが起きたかわからなかったんですが、商店街の人たちが外に出てきてて。地震だってわかりました。」
「電車で来られていたんですか?」
「いえ、車でした。電車が止まって駅が止まってという状況になって、初めて見ましたね。あんな光景。すぐに子どもらが心配になって、時計見ると、学校にいる時間帯だったから良かったんですが、もし登下校中とか遊びに行っている時間だったら怖いですね。」
「お子さんたちをすぐに迎えに行かれたのですか?」
「いえ、妻に行ってもらいました。すぐに迎えに行きたかったんですが自分では迎えに行けない状況で。。。車でパーキングを利用していたのですが、電源落ちちゃって動かない。電話もつながらない。
「ひゃー。困りましたね。」
「信号機も停まって、おまわりさんも足りない。立体パーキングなんかではパレットが落ちて1週間車を出せなかった知人もいました。」
「大混乱でしたもんね。みなさん気を付けて運転していたような気がするのは良かったですが。」
「災害時にはコインパーキングから車が出せない可能性がある。これは誰もが陥りそうな状況ですね。今度運営会社にどうしたらいいのか聞いてみたいと思います。」

子どもの頃の危険な体験

「有泉さんって生き物好きですよね。」
「はい、好きですね。(笑)」
「そんな有泉さんだからこそ、子どもの頃やんちゃで、いろんな危険な体験してるんじゃないかと・・・もし、そんな話があれば教えてもらえますか?」
「ずっと水泳やっていたんで溺れることないんですけど、溺れかけた体験があります。」
「おお、有泉さんっぽいアクティブな感じですね。」
「小学校・中学校と水泳仲間で毎年三浦海岸に泳ぎに行っていたんですね。お気にあるブイまで辿りついたら一休み。そんでまた戻ってくる。それを繰り返しているような。」
「ふむふむ。」
「あるとき、水泳仲間がふざけて笑わせてきて、大笑いしたんです。本当におかしくって大口あけていたらちょうどそのときに波をかぶってしまって。」
「うわ。海水飲み込んじゃったと?」
「はい(苦笑)。その通りで、しかも気管支というか変なところに入ってしまい、もう咳き込みが止まらなくなり、息継ぎもできず、なんとかブイにしがみついて治まるのを待ちました。」
「それだけ咳き込んでいたら泳ぐのもままならないですよね。」
「そうなんです。それどころか、身体に力が入りすぎて硬直してしまいますね。泳ぐことは全くできませんでした。」
「泳ぎに得意な人でも、海水を飲み込んでしまい気管支の方まで入っちゃうと息継ぎもできず身体も動かせなくなって泳げなくて溺れてしまうというリスクがあるという話ですね。」
「水泳のときは絶対にふざけちゃいけませんね。」

最近気になる身のまわりの危険について

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有泉さんが防災トランプで印象に残っているカード

「有泉さんの話おもしろいですね。言葉もやさしくわかりやすいし。」
「そうですかね。家族兄弟全員、自分以外みんな学校で教師やってたりするせいかもしれません。」
「おおー。なるほどー。」
「さて、そんな有泉さんが気になっている身のまわりの危険ってどんなものがありますか?テーマ問わず何でもいいんですけど。」
「ブロック塀ですね。(即答)」
「おお、即答ですね。お仕事に関連ある感じで危ないと思ってらっしゃった感じでしょうか。」
「うちの実家でも去年やっちゃったんですが、外構やブロック塀の劣化による倒壊。今仕事している現場なんかでも風化や劣化が目立つコンクリートブロックがあるんですね。しかも7~8段も積んであって、倒れかけてます。」
「どんな感じで危ないんでしょうか?」
「ブロック1個3.5kg。5段×10列で175kg。8段×10列なら280kgにもなります。高さ20cmなので、5段で1m、8段になると1m60cmですよね。それ自体の重さがあるので、地震の際に崩れたら、壁の傍を歩いている小学生くらいなら大けがさせられる重量だと思います。」
「まとめて倒れたら本当に危ないですね。」
「鉄筋が入ってますから、新しいものはまず大丈夫なんですけど、風化劣化は防げない。古いやつはいつ倒れてもおかしくないですね。直下型地震なら尚更です。」
「ちなみに古いブロックの見分け方というかポイントって何かありますか?」
「そうですね。まず耐用年数で言うと20~30年。見た目で言うと一番上のブロックがボロボロと穴があいている状態で、白っぽいねずみいろで藻が生えてしまっているようなものは古いですね。」
「うちの壁に使っているブロック古いかもしれません^^;帰ったら見ておきます。」

防災・防犯をテーマに読者の方へメッセージ

「最後に読者の方へ防災・防犯をテーマにメッセージをお願いしてもよろしいでしょうか。」
「先ほど話をしたブロック塀ですが、自宅の近くや通学路などでチェックしておいてください。チェックの仕方は、ブロック塀の高さが5段(1m)以上の箇所で、コンクリートが古くなったり、藻が生えていたり、穴があいたりしていないか。そのブロック塀がある道路の幅もチェックするといいと思います。4mくらいの幅の狭い道路だと、5段あるブロック塀は倒壊時に1/3くらい埋まってしまいます。大地震が起こらないうちにチェックして危ない道とそうでない道をお子さんと共有しておいてください。あと、泳ぐときは絶対ふざけちゃダメですよ。」
「大変為になる話ばかりであっという間でした。ありがとうございました。」
株式会社 有泉産業
横浜市港北区を拠点に、「造成工事」「建物解体工事」「建築工事」「外構工事」などを取り扱っています。建物についてお困りの事があれば、
電話: 045-834-9441
E-mail:t.ariizumi[at]ozzio.jp
までご連絡ください。※[at]は@に変換下さい。
「防災の話を見た」と一言添えて頂ければ幸いです。
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福本 塁
1982年生まれ。「防災トランプ」開発者。長岡造形大学 建築・環境デザイン学科 准教授。博士(工学)。防災士。日常の会話になかなか出てこない「身近な危険」や「災害」について個人の体験談や考えを、楽しく、世代をこえて話し合う場をつくる活動を行っている。
福本 塁

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